寒くなってくると無性に“おでん”が食べたくなる私酒井は、大阪生まれなのですが、大阪では“おでん”のことを「関東煮(かんとだき)」と呼ぶことがあります。
最近でこそ“おでん”という名称が一般的になっておりますが、昭和初期頃までは大阪で「おでん」といえば田楽を指したそうで、煮込み仕立てのいわゆる“おでん”は「関東煮(かんとだき)」と呼ばれ親しまれてきたのです。
話がドンドン違う方向にいってしまいそうなので、本題に入りますが、今回はこの“おでん”をキーワードに、中小企業経営のノウハウをご紹介したいと
思います。
1.うどん屋店主の物語
これからお話するのは、とある「うどん屋店主」の物語です。脱サラ組の店主は、第2の人生を賭け、都内にうどん屋をオープンしました。故郷の讃岐で学んだうどん造りには自信があります。事実、この店主が造るうどんはコシがあってとても美味しいのです。
しかし、店は繁盛しませんでした。すっかり自信をなくした店主は、数多くの「経営コンサルタント」と呼ばれる方々にアドバイスを求めました。
皆口を揃えてこう言います、「うどんが茹で上がるまで時間がかかり過ぎているのが原因だ!もう少し茹で時間が短くなる様に、うどんを改良しなさい!」と。
しかし、店主は拘りのうどんだけはどうしても変えたくなかったのです。このまま、店は閉店してしまうのでしょうか…。
2.先入観を捨てて相手の立場になる
このコラムをご覧頂いている皆様も、これまで大きな壁にぶつかった経験があるかと思います。そんなとき、解決策を見つける一番の近道は「先入観を捨てて、相手の立場になって考える」ことです。この店主のお店に来られるお客様は、本当に茹で時間を待つ時間がないのでしょうか。いくら茹で時間が長いといっても、通常のうどんより5 分~10 分程度長いだけですし、確かにうどん屋の中では料理が運ばれてくるまで時間がかかる方ですが、他の種類の料理店と比べると、決して遅い方ではありません。
ではなぜお客様は待てないのか?
心を“無”にして、自分がうどん屋に入った様子をイメージしてみましょう。これは私の推測ですが、恐らくこのお店にきたお客様は、「うどんは直ぐに出てくるものだ」というイメージが、時間の経過とともに空腹感を増幅させ、それを苛立ちへと変えてしまったのだと思います。
そして、折角の美味しいうどんも、その様な気分で食べては美味しさ半減…。
結果的に、お店自体の悪い印象として脳裏に残り、2度目以降の来店につながらないのだと思います。
3.起死回生!セルフおでん
その後、このお店は、あるサービスを始めたことをきっかけに地域で一二を争う繁盛店となりました。
そのサービスは、何と「セルフおでん」です。
お店の中央に台を設置し、おでんをセルフサービスで販売したのです。お客様は、うどんが茹で上がるまでのあいだ、好きなおでんを選んで食べることが出来ます。値段も1本80 円と非常に良心的な設定で、1~2本食べ終わるころには、うどんが運ばれてくるという仕組みです。
このアイデアは、「先入観を捨てて、相手の立場になって考えた」からこそ生まれたものです。「茹で時間が長い」から「茹で時間の短いうどんに変える」では、この様な結果にはならなかったのは言うまでもありません。
もちろん、“店主の拘ったうどんが美味しかった”という大前提があってこその結果であることを誤解のないように補足させて頂きます。
4.中小企業経営のノウハウ
今回はうどん屋の例を紹介しましたが、この手法は既に多くのお店で取り入れられております。私の地元では、お好み焼き屋にも「セルフおでん」があったくらいですから。
誤解しないで頂きたいのは、このお話は決して皆様に真似て頂きたくてご紹介した訳ではございません。
中小企業経営のノウハウは、決して他人の真似をすることではなく、自分(自分の会社)と真剣に向き合い、お客様の満足を第一に考えれば自ずと生まれてくるものだということを知って頂きたかったのです。
弊所でも、微力ながら中小企業経営のサポートをさせて頂いております。壁にぶちあたっている方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談下さい。一緒に頭を悩ませましょう。